□制作ディレクターTによる、藤原ヒロシ新作アルバム「manners」ゆるっと解説 その7□
tr.11 かすかなしるし
リアルタイムではなく、僕はここ4~5年の間でsubliminal calmというプロジェクトを知りました。4年前のとあるヒップホップものの
お仕事の際に話題に挙がり、当時Amazonで中古盤を探して購入しておりました(笑)
この名曲を、2013年度版にリニューアルするということで、アレンジを進めていたのですがなかなかうまくいかずに、
ご多忙の渡辺シュンスケさんに、追加作業をお願いをしたところ、快諾いただきました。送ってくれたアレンジデモが、いきなりすばらしく、もともとシュンスケさんの持っていた音楽フィーリング&繊細なピアノプレイとヒロシさんの「憂い」のあるメロディー感がみごとに融合したものでした。
ミックスを手がけた佐藤宏明さんのお話。スチャダラパーやTOKYO NO.1 SOUL SETなどの作品で活躍するエンジニア。
実はDUBにも造詣が深く、このアルバムオリジナルトラックもそうですが、配信シングルと、ボックスセット版DISC2に収録されている
DUBヴァージョンが、さらにすばらしいミックスワールドを聴かせてくれます。
もともと三拍子の曲なので、ダブ/リミックス的アプローチはなかなか難しい素材であるのにも関わらず、みごとな仕上がりになっていますよ。
tr.12 june
記憶をたどるに、アルバム作業の中でおそらく一番最初に手がけた楽曲だと思います。アルバムテーマに沿って、これも高橋コウタさんと、
ちなみに冨田自身もトラックに関してあれこれ一緒に打ち込んだり、音色を選んだりと作り上げ、組み立てていった楽曲です。
ここでのトライとしては、キーボードプレイを、こまかくフレーズなどは全く決め込まず、渡辺シュンスケさんにとにかくいろいろ
弾きまくって頂き、それらをチョップ&エディットして構成されたものです。昨今のチル系サウンドは、このように作っているのではないか、
と想像しながら、既成の音楽の作り方でない、その手法にもこだわって進めてみました。
今回のアルバム、本来僕はディレクターというポジションで、作品をナビゲートしていくのが通常のお仕事なのですが、ヒロシさんから「冨田さん、エンジニアやったらいいんじゃないですか?」というご意見をいただいて、最初はマジでえ〜とビビっていましたが、過去の経験を生かして、ぜひやってみようという気持ちになり、先に寺田さんが手がけたRECセッションとミックスを除く、ほぼすべてのレコーディングエンジニアリングまでも担当させて頂きました。ドキドキしたけど、本当にやってよかった。楽しかったです。
ここで感じたのは、この作品での、ミュージシャンのみなさんへの愛のある無茶ぶりの数々。そして僕のエンジニア起用。
藤原ヒロシというプロデューサーの、とにかく普通ではすまさない、何事もチャレンジとオルタナティブをきめていくスタンスそのもの。そこに生まれるエネルギーこそが「藤原ヒロシ・プロデュース術」なんだなと、あらためて痛感しました。
長々とおつきあい頂きました、藤原ヒロシ新作「manners」ゆるっと解説、いかがだったでしょうか。
関わったみんなが、完成に向けて「プロセス」を大事にして作りました。結果も大事ですが、作品リリースという「パーティー」を
もっともっと楽しもうと思います。
ありがとうございました。(T)